生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

 生物の本質を自己複製機能にある、と一般的には言う。僕も高校でそう習った。だが、その定義だとウイルスも生物に含まれるが、まるで鉱物のような性質をもち命の律動を感じさせないウイルスを生物と定義することは僕らの直観に反するのではないか。そういう問いかけから始まる。

 中盤まではクリック、ワトソンなど分子生物学黎明期の歴史について簡単に説明している。エイブリー、フランシス、シェーンハイマー等、光を当てられる機会の少ない学者も紹介している。

 後半に入り、生物の本質を、「動的平衡」にあると定義する。それは、エントロピー増大に逆らう唯一の方法として、秩序を絶え間なく壊しまた構築し続けることが必要だからだ。動的平衡を保つために、生物は「相補性」という特徴を持っており、DNAの螺旋が二重であることもその一例である。

 また別の言葉で、生物と機会(=無生物)の差を時間の有無であるとも言っている。

 機会には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品をぬk撮ったり、交換することができる。そこには二度とやり直すことのできない一回性というものがない。機会の内部には、折りたたまれて開くことのできない時間というものがない。

 生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生物とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる。

 動的平衡の概念は面白かった。自己複製機能の話よりよほど説得力がある。より詳しく知るために、著者の他の書籍もあたりたい。

 生物学者としてはとても個性的な文章も印象的。時々センチメンタルに過ぎるが、うざければ読み飛ばせばいいので、今のところは好印象。

 

 

クロス・マネジ 2 (ジャンプコミックス)

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