もう一度 (新潮クレスト・ブックス)

もう一度 (新潮クレスト・ブックス)

 

  monadoさんに勧められて。すげぇ面白かった。素晴らしかったよ。

 リアルを感じたい、現実はリアルから遠すぎる、リアルを感じるために現実を再現して味わい直したいという欲望にとりつかれた男の話。奇妙なようで、説得力があるというか、いやむしろ正当というか、確かにそうなんです実は僕もそうしたかったんです、と、思わざるをえない。

 リアルを感じそうになる瞬間、引き伸ばされて極限まで薄く短くなった無限小の時間単位の中での繰り返し。そうだよね。リアルってそういうもんだよ。僕もそう思う。僕もそういうのを感じたくて生きてる。

 文章のウィットも、展開の意外性も、ユーモアも、ギミックも、すべて噛み合っていい感じに仕上がっていて、トム・マッカーシーの技量には圧倒された。

 しかし、もちろん技術の裏打ちがあってこそこの小説が完成しているのではあるが、そういうことに対する感想は抜きにしていいと思う。どのくらいこの小説を好きかどうかだけ語ればいい。僕は98点をつける。僕はこういう快楽が大好きだ。